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議会の取り組み

議会の取り組み詳細

2023 年 11 月定例会一般質問 (破綻した核燃料サイクル政策と避難対策について、水道料金の格差是正について、食料自給率・食料自給力の向上について、生活に困窮した高齢者への支援について、高齢者の生活を守る最後の砦である養護老人ホームについて)

2023-12-05 この記事を印刷

 日本共産党の尾村利成でございます。

【1.破綻した核燃料サイクル政策と避難対策について】
 質問の第一は、島根原発の諸問題についてです。
 丸山知事は昨日、「島根原子力発電所1号機廃止措置計画の変更に係る事前了解」について、「県として了とする」ことを表明されました。
 わが党は、廃止措置、すなわち原発の廃炉には賛成であります。しかし、原発の廃炉計画と同時に、使用済み核燃料を再処理し、猛毒物質であるプルトニウムを燃やすプルサーマル運転がセットとなっている廃止措置計画は、まさしく毒入り計画と言わざるを得ないのであります。
 本計画は、島根原発2号機の再稼働を前提としており、さらに、危険なプルトニウムを島根原発2号機で燃やすプルサーマル発電を行うこととしています。破綻した核燃料サイクル政策、プルトニウム循環方式にしがみつく、廃止措置計画は容認できません。
 原発を運転すれば、プルトニウムなどを含む使用済み核燃料が生まれます。しかし、使用済み核燃料を処理・処分する方法は未確立です。
 六ケ所村の再処理工場は、着工から30年経っても完成の見通しがありません。使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場も決まっていません。自分が生み出す核廃棄物の後始末ができない原発は、決して完成した技術とは言えません。原発を動かす限り、処理方法のない「核のごみ」が増え続けます。これ以上、危険な核のごみを増やし続け、将来の世代に押し付けることなど許されません。
 使用済み核燃料を、これ以上増やさないためにも、破綻した核燃料サイクル政策から撤退し、「原発ゼロ」の政治決断を行うべきであります。
 中国電力は、来年8月に島根原発2号機を再稼働させようとしています。この動きに対し、県民から「事故時に、無事に避難できるのか」「避難バスが本当に来てくれるのか」など、避難計画の実効性を不安視する声が寄せられています。
 この間、バスの運転手不足を理由に、県内各地の路線バスの減便や廃止計画が相次いで発表されています。事実、島根県内のバス事業者の乗務員数は、2017年の691人から2022年には594人となり、この5年間で100人近く減少しました。バスという箱はあるものの、運転手さんが足らない状況にあります。
 島根県は、2017年4月に中国地方5県のバス協会と「原子力災害時等におけるバスによる緊急輸送等に関する協定」を締結し、協会会員による避難住民の輸送等の協力を求める際の必要事項を定めました。
 ここで、新潟県において、バス事業者に対して実施されたアンケート結果をご紹介します。
 新潟県において、2016年に「運転業務従事者への原子力災害時における業務従事に関するアンケート」が実施されました。アンケートでは、「福島第一原発事故のような事故が起きた場合、30km圏内の輸送に協力依頼があった場合、区域内に行っていただけますか」という設問で、バス運転手の62%が「行かない」と回答しています。
 そこで、伺います。
 原子力災害時の住民輸送に必要なバスと運転手は本当に確保できるのでしょうか。事業者や関係者の要望や不安を掌握し、現時点での対応方針ならびに計画の検証を求めます。
 私は6月議会で、「現場の声、課題を掌握することなしに避難の実効性を高めることはできない。徹底して避難を余儀なくされる人、施設、学校の声を聞くべきと考える」と質問しました。これに対し、丸山知事は「病院や社会福祉施設を対象とした説明会を開催し、訓練機会を拡充する。保育所、学校を対象とした会議で意見を聞く機会を増やすことを考えている」と答弁されました。その後の進捗状況はどうなっていますか。
 避難手段の確保、避難先の受入体制、避難行動要支援者の支援など、原子力災害時の避難対策は課題山積です。今後、どのように実効性の向上を図っていくのか伺います。

【2.水道料金の格差是正について】
 次に、水道料金の格差是正についてです。
 水道は、県民生活に不可欠なライフラインであることは言うまでもありません。しかしながら、電気やガスなどのライフラインと異なり、その料金については、大幅な格差が黙認されてきました。
 令和3年度のデータによると、全国的には、家事用20立米あたりの料金が、最低の兵庫県・赤穂市で869円であり、最高は北海道・夕張市の6966円で、約8倍の格差が生じています。
 本県においても、最低は斐川宍道水道企業団の2697円であり、最高額は大田市の5005円で、約2倍の格差が生じています。
 県民の安心・安全に不可欠なライフラインにおいてこのような格差が許されてよいのでしょうか。更に、水道施設の老朽化や少子化による給水人口の減少など、水道事業の先行きは厳しい状況にあります。
 こうした現状を踏まえ、国は水道の広域化を打ち出しています。本県でも令和5年3月に「島根県水道広域化推進プラン」を策定し、その中では、浄水場の共同設置や将来的な事業統合の検討などがうたわれています。
 一方で、同プランでは、約50年後には、少子高齢化の進展等に伴って、料金収入が約40%減少し、大幅に落ち込むと見込んでいます。また、施設の整備更新費用の増嵩等によって、1立米あたりの給水原価も約2倍になると見込んでいます。
 料金収入の40%減、給水原価が2倍となる将来予測を踏まえれば、広域化による効率化だけで、県民が安心して水道を利用できる環境が維持できるかどうか、はなはだ疑問であります。現在でも約2倍となっている料金格差がさらに拡大していくのではないでしょうか。
 そこで伺います。
 県民生活に不可欠なライフラインである県内市町村の水道料金の格差について、現状と将来の見込みについて伺います。
 地方公営企業は、そもそも非営利企業であるはずであります。水道事業の目的は公共の福祉の増進であり、値上げをどう抑えるかを真剣に考えなければなりません。県の水道用水供給事業の現状と将来見込みについて伺います。
 水道料金については、低年金で暮らす高齢者など、生活が苦しい世帯でも安心して利用できる水準とすることが求められます。県民の安心・安全を確保するため、将来的にわたって維持すべき水道料金の水準はどうあるべきか、見解を伺います。
 最後に、このあるべき料金水準を上回っている市町村水道事業に対しては、同じくライフラインである電気料金等の水準の決定について国が関与していることに鑑み、国が交付税制度の積極的活用などで格差分を補填するなど責任を果たすべきと考えます。所見を伺います。

【3.食料自給率・食料自給力の向上について】
 次に、食料自給率・食料自給力の向上についてです。
 異常気象、コロナ禍とロシアのウクライナ侵略を機に、穀物、油脂・肥料・原油価格が高騰し、これに異常な円安が加わって、日本の農業・食料は危機的状況に直面しています。
 国連は、「第二次大戦以来の食糧危機」と警告しており、今こそ海外依存から国内増産へと農政の大転換を図る時です。価格保障・所得補償を抜本的に充実し、大規模化一辺倒をやめ、中小の農業経営への支援策を強化し、食料自給率を抜本的に向上させる施策を講じることは急務です。
 2022年度の食料自給率及び食料自給力指標が公表されました。食料自給率はカロリーベースで38%であり、主要国で異常に低い水準に留まったままです。
 食料自給力指標とは、国内生産のみで、どれだけの食料を最大限、生産することが可能かを試算した指標です。この指標は、輸入停止時などに国内でどれだけの食料を供給できるかという潜在生産能力を表すものです。
 農水省は、指標を「米・小麦中心」と「いも類中心」の食生活の2つのパターンで示しています。「米・小麦中心」の場合に供給できるカロリーは、1人1日当たり1720kcalしかなく、「いも類中心」の場合は、2368kcalであります。
 人が体重を保つために最低限必要なエネルギーは、1人1日当たり2168kcalといわれます。しかし、「米・小麦中心」の食生活では、最低限必要なエネルギーを20%下回り、飢餓水準となる状況です。
 農水省が示した、いざという時の有事メニューに対し、驚愕の声が上がっています。農水省が示した「イモ類中心」の食生活の場合、サツマイモとジャガイモが一日3食、朝食に食パン半切れ、夕食にご飯1杯、副食は野菜炒め、サラダか浅漬けという悪夢の食卓像です。さらに、牛乳は5日にコップ1杯、卵は1か月に1個、焼き肉は21日に1皿という状況です。現在の食料・肥料・飼料の自給率では、飢餓水準ギリギリの食卓となるではありませんか。
 世界の食料事情を見れば、中国が世界最大の農産物輸入国になりました。中国は14億人の国民が1年半、食べられるだけの穀物備蓄を目的に食料を爆買いしています。ロシアやベラルーシは、「日本は敵国だから売らない」と言い、世界の穀倉であるウクライナは、積み出し港への攻撃再開で輸出ができなくなっています。インドは、自国民の食料確保のため、小麦と米の輸出規制を始めるなど、輸出規制をする国は30か国に及んでいます。
 それに対し、日本の穀物備蓄はわずか1.5か月から2か月分しかなく、食料危機に対する準備ができていません。肥料や種子の自給率の低さを考慮すると、カロリー自給率は38%どころか、10%あるかないかの「砂上の楼閣」であり、海外からの物流が停止したら、餓死者も出かねない危機的状況にあります。
 今日の食料事情を見れば、もはやお金を出せば、食料をいつでも輸入できる状況ではないことを直視すべきであります。
 今日の食と農の危機は、食料は安い外国から輸入すればいいと、農産物輸入を際限なく拡大してきたことにあります。食料自給率向上のためには、輸入自由化路線と決別すべきであります。
 食料供給の不安定化を見据えて、食料自給率の向上・回復を政治の柱に据え、農政の中心課題に据えて取り組むべきと考えます。所見を伺います。
 島根の第一次産業の深刻な課題は、労働力の減少と高齢化にあります。2020年度の「農林業センサス」では、島根県内の基幹的農業従事者は1万4438人で、その5年前から5770人の減少となっています。この状態が続けば、十数年後には島根農業が消滅しかねません。
 島根県の中山間地域は、県内のほぼ全域に及んでいます。島根県農業の再生と発展、持続性を考える場合、中山間地域問題の解決は必須であります。
 その点で、中山間地域等直接支払制度は、農業の条件不利の補正に留まらず、過疎地での集落維持にも多大な役割を果たしてきました。しかしながら、本年度、国の中山間地域等直接支払交付金の予算が不足し、集落機能強化加算、生産性向上加算などの交付金が減額となり、現場からの悲鳴が上がっています。
 生産条件不利地である中山間地域でも持続的な農業ができるよう、中山間地域等直接支払制度の予算拡充を国に強く求めるべきです。所見を伺います。
 国は昨年、「5年間、一度も米づくりが行われない農地には交付金を出さない」などとする、水田活用の直接支払交付金制度改悪を強行しました。さらに、今年、「畑地化促進事業」として、一時的な補助金を用意し、転作支援を打ち切ろうとしています。
 水田活用の直接支払交付金のカットは、減反政策に協力してきた農家への重大な裏切りであり、大規模経営や集落営農を破綻させるものであります。水田活用の直接支払交付金の見直し・大幅カットをやめ、維持・拡充するよう、国に強く求めるべきです。県としても、生産現場の実情を踏まえ、安心して転換作物の生産に取り組むことができるよう、支援を強化すべきであります。所見を伺います。

【4.生活に困窮した高齢者への支援について】
 次に、生活に困窮した高齢者への支援についてです。
 まず、無慈悲な年金差し押さえなど行政による滞納処分について伺います。
 今日、物価の上昇や年金の実質的減額、介護や医療費の負担増によって、低所得者や生活困窮者が社会保障制度から排除される深刻な事態が県内においても生まれています。
 介護保険において、令和4年度末の保険料滞納者は、県内で2468人に上っています。保険料未納による制裁措置として、令和4年度において56人が給付減額措置を受けました。すなわち、通常1割の利用料が3倍の負担となる3割に割り増しされたのであります。
 何より看過できないのは、年間の年金額が18万円に満たない人、すなわち、月額の年金額が1万5000円以下の人への滞納処分です。
 年金額が月額1万5000円以上の人においては、介護保険料は年金から天引きされます。しかし、月額1万5000円以下の人は、自治体への直接納付となっています。つまり、保険料の未納が発生するのは、基本的に月額1万5000円以下の低年金の高齢者となります。
 令和4年度、県内においては、102人の未納者に対し、418件、約557万円もの差し押さえが実行されました。
 そのうち、松江市では、85人に対し、400件、約447万円もの年金差し押さえが行われています。生活の糧である年金を押さえられた高齢者の生活はどうなっているでしょうか。
 75歳以上が加入する後期高齢者医療保険においても、140件、約400万円もの差し押さえが行われています。
 知事に伺います。
 保険料未納者に対する、生きる糧さえ奪いかねない、無慈悲な差し押さえや自己負担の割り増しなどの制裁措置の実態をどのように認識していますか。制裁措置など滞納処分を受けた方が、健康で文化的な最低限度の生活ができているのか把握し、適切なる支援を行うべきであります。所見を伺います。
 行政の仕事は、とりわけ、福祉の分野では県民に寄り添うことが最優先であり、徴収第一主義であってはなりません。生活に困窮し、保険料を払いたくても払えない方に対する支援、サポートを強化すべきであります。所見を伺います。

【5.高齢者の生活を守る最後の砦である養護老人ホームについて】
 最後に、高齢者の生活を守る最後の砦である養護老人ホームについて伺います。
 特別養護老人ホームと養護老人ホームは、大きな違いがあります。特別養護老人ホームは、介護保険の入所施設であるのに対し、養護老人ホームは、自治体の長の職権によって入所できる施設です。
 養護老人ホームの入所要件は、「独居で親族からの生活支援を受けることができない」「家族との同居が続けられない」などの「環境上の理由」があり、「本人が生活保護を受給していたり、世帯の中心者が住民税の所得割を課されていない」など「経済的な理由」があるとされています。
 養護老人ホームは、介護保険や民間では対応しきれない困難な状況にある人を救済するために、老人福祉法に規定された「最後の砦」であります。
 今日、貧困と格差が日本社会を覆い、生活・病気・家族関係など複雑な問題を抱えた高齢者が急増しており、養護老人ホームの果たすべき役割はますます重要になっています。しかしながら、自治体の関係者でさえ、措置制度である養護老人ホームの役割を十分に認識されていないのが実態です。
 そこで、伺います。
 養護老人ホームの措置理由の状況、入所率、待機者数など現状を伺います。また、現在の高齢者福祉において、養護老人ホームが果たすべき役割を伺います。あわせて、養護老人ホームが果たしている今日的役割について、改めて行政、福祉関係者、県民に周知徹底するべきであります。所見を伺います。
 公益社団法人・全国老人福祉施設協議会の調査によれば、令和4年の養護老人ホームの入所措置率は、市段階では浜田市が0.75%、大田市が0.48%、益田市が0.46%、松江市が0.19%の状況であり、町段階では飯南町が2.73%、川本町が2.69%、美郷町が2.65%、西ノ島町が2.35%であり、自治体間の措置率に大きなばらつきがあります。この要因として、一つに入所定員数の問題があるのではないでしょうか。
 人口の少ない川本町、美郷町、西ノ島町などの入所定員数は50人であるのに対し、出雲市は130人、益田市は130人であり、県都・松江市においては、わずか110人という状況であります。
 要因の二つとして、2005年度に養護老人ホームの運営費が国庫負担金から一般財源化され、措置費の財政負担が重荷となりました。このことによって、市町村が養護老人ホームへの措置について消極的になってしまう、いわゆる「措置控え」が生じているのではないでしょうか。
 県内市町村の待機者数や入所率の格差は、県内でも「措置控え」が生じていることの裏返しとも受け取れます。県の認識を伺います。また、入所定員の地域偏在について、どのように認識しているのか伺います。
 最後に、養護老人ホームが生活に困窮した高齢者が安心して利用できる場とするため、現在、策定が進められている「第9期島根県老人福祉計画・介護保険事業支援計画」において、その役割を改めて明確に位置づけるべきであります。県内市町村での措置基準の運用にばらつきが生じないよう、県として市町村に働きかけるべきです。所見を伺います。
 以上で質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。

議事録及び録画中継は県議会のHPにてご覧になれます。尾村県議の動画