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議会の取り組み

議会の取り組み詳細

2023 年 11 月定例会 令和 4 年度決算認定に対する討論

2023-12-21 この記事を印刷

 日本共産党県議団を代表して、一般会計及び特別会計、病院事業会計、水道事業会計の3件の決算認定について、認定とした委員長報告に反対の討論を行います。
 予算並びに決算は、政治の顔、政治の鏡と言われています。議会における決算認定は、可決された予算が正確に執行されたか否か、計数が正確であるかどうかを審査するだけではなく、次年度以降の予算編成に資するため、広範な角度から住民の立場で行政を評価・検証するものと考えます。
 日本共産党県議団は、県政の評価基準として2つの物差しを置くものであります。1つに、県政が、憲法が定める生存権や財産権、幸福追求権など基本的人権を保障しているのか。2つに、県政が、地方自治法が規定する住民の福祉の増進という自治体本来の役割を発揮しているのか。ここに立脚するものです。

【認定第6号議案「令和4年度決算の認定について(一般会計及び特別会計)」】

 まず、認定第6号議案、令和4年度一般会計及び特別会計の決算認定についてです。
 今、地方は、住民の暮らしの困難、福祉、医療、農林水産業の危機、地域経済の衰退など、深刻な課題に直面し、さらに、物価の高騰で、医療、福祉の現場、中小業者の経営はもとより、広く県民生活が疲弊しています。
 これまで、新自由主義的な政策の下、安全・安心を脅かすような規制緩和と、公共サービスや社会保障の弱体化が進められてきました。しかし、コロナ禍を経て、公衆衛生や医療、福祉をはじめとする公共の大切さ、役割が再認識されています。行き過ぎた行財政改革は根本的に見直し、公共サービスや医療、福祉、産業政策を、住民の暮らしを支えるという視点で転換すべきであります。
 一方、日本はこの30年で、先進国で唯一、「賃金が上がらない国」となり、そのうえ消費税は5%から8%、10%へと、実に14兆円もの大増税が行われました。社会保障は、年金、医療、介護などあらゆる分野で、負担増と給付の削減が繰り返されてきました。
 世界有数の高い学費に加え、無償とされる義務教育でも給食費や学用品費など重い教育費の負担が家計にのしかかっています。食料自給率は38%と、この30年間で10ポイント近くも下落。エネルギー自給率も10%と先進国で最低水準です。東京一極集中政策と併せ、これらは人口減少や中山間地域の衰退にあえぐ地方の再生にも逆行し、知事が掲げる島根創生とも相反するものと言わざるを得ません。閉塞感を打開する抜本的な方策こそ、今の政治に求められているのではないでしょうか。
 県政に求められるのは、基本的人権の保障、住民福祉の増進という自治体本来の役割を発揮し、ウクライナ危機や異常円安による諸物価の高騰や感染症の拡大から、県民のくらしと命を守るための責任を全うすることにほかなりません。とりわけ、公衆衛生体制の強化や、危機的状況にある公的医療、福祉サービスに対する強力な支援、農林水産業をはじめ、地域の生業を守るための施策の拡充、企業誘致だのみではなく、地域内で経済が循環するような産業政策へと切り替えていくことが求められています。
 物価高騰の下、暮らしが大変になっているときだからこそ、国政のような暮らしを圧迫する誤った政治を県政に持ち込むのか、それとも、それに立ちはだかって、島根県政が県民の暮らしと命を守る防波堤の役割を果たし、基本的人権の保障と住民福祉の増進を前面に掲げ、自治体としての積極的な政策を立案・実行するのか、このことが鋭く問われています。
 以下、県政上の課題及び県政のあるべき方向を12点申し上げます。
 
 第1に、総人件費抑制策や事務事業の見直し、縮小は、職員の士気や組織の活力を低下させ、県民サービスを縮小させるだけでなく、非正規職員の増加や、指定管理などの下で働く、低賃金の労働者を生み出しています。この現状を是正するため、正規職員の増員、非正規で働く職員や公の施設で働く労働者の賃金引き上げに向け、県としての積極的な対応を求めます。また、県の事業の見直し、縮小が、市町村に負担を転嫁するものであってはなりません。住民に身近なサービスを提供する市町村と固くスクラムを組み、住民のニーズに沿った支援策を充実すべきであります。
 第2に、県税や社会保険料を滞納した低所得者に対する無慈悲な差押えが行われています。令和4年度の個人住民税の差押え件数は1296件、国民健康保険料・税の差押えは599件に及んでいます。介護保険料未納者に対する年金の差し押さえが、91人に対し407回も実施されていたことが明らかになりました。低年金の方に対するこの差し押さえは、憲法25条で規定されている生存権を侵すものと言わざるを得ません。市町村に対し、是正を求めるとともに、生活に困窮する県民への生活支援にこそ力を注ぐべきであります。
 第3に、実質賃金や年金が減少し、生存権が脅かされている下、民生費、衛生費などの社会保障予算がぜい弱であります。令和4年度、75歳以上が加入する後期高齢者医療保険制度において、保険料未納による制裁措置として、259件もの短期保険証が発行されています。国民健康保険では、本年10月時点で、加入世帯の約6.8%に当たる5378世帯が保険料・税を滞納しています。そして、その制裁の措置として、命綱である保険証の取上げが334世帯にも達しています。介護保険では、本年6月の保険料滞納者は2394人にも上り、未納による制裁措置として、令和4年度において56人が給付減額措置となり、3割の利用料負担が課されました。
 貧困と格差が拡大し、低所得者や生活困窮者が社会保障制度から排除された結果、必要な医療が受けられず命を落とした事例など、深刻なる重大事態が起きているではありませんか。県政は、この実態、県民の苦境を直視すべきです。
 国民健康保険料を引き下げるため、均等割、平等割などの応益割を廃止するとともに、県による独自財源投入を決断すべきであります。介護保険についても、保険料や利用者負担の軽減策を講じるなど、人間の尊厳を守るべく社会保障を抜本的に充実させることを求めます。
 そして、住民の命と健康を守るために奮闘している、医療・介護・保育・障がい者福祉など、医療・福祉の現場で働く労働者、「ケア労働」の処遇を、抜本的に改善すべきであります。
 第4に、宍道断層近傍に建設が計画されている松江北道路事業は、県民の理解と合意が得られておらず、中止すべきであります。こうした不要不急の事業が進められようとする一方で、土砂災害要対策箇所の整備率は19.2%、落石等通行危険箇所の整備率は9.9%、県管理河川の整備率は32.12%でしかありません。
 このように、災害に弱い県土という現実を直視し、防災・減災型公共事業こそ最優先すべきであります。また、県が行う建設事業に対して、市町村へ過大な負担を求めるべきではありません。
 第5に、農業においては、農産物の際限ない輸入自由化路線の中止、食料自給率向上のための施策を国に強く求めるべきであります。持続可能な農業経営の実現、島根農業の再生に向け、生産コストをカバーする農産物の価格保証と農家の所得補償を抜本的に充実させることを強く求めます。
 第6に、企業誘致頼みから脱却し、地域に根を張って頑張る中小企業、地場産業育成にこそ、商工予算の柱をシフトすべきであります。物価高騰で苦境に立たされる業者への支援を拡大するとともに、内発型、循環型の地域振興策の推進を求めます。
 また、島根県の最低賃金は時給904円ですが、東京都の最低賃金は1113円であり、依然として209円もの開きがあります。最低賃金を引き上げ、安定した雇用をつくることは、人口減少対策の要(かなめ)であることを強調するものです。
 第7に、同和対策事業の特別措置法が終結したにもかかわらず、本県においては、同和教育を全ての教育の基底に据え、同和教育を特殊化、別格化する立場に今も固執しています。民間の同和団体への突出した補助金支出が、逆に不公正を生み出しています。同和教育は終結し、運動団体への補助金は他の補助金との公平性を図るべきです。
 第8に、子どもを苦しめ、学校間の序列化を生み、教育現場を競争に駆り立てる、全数調査による学力テストの中止を求めます。ましてや、学校別結果の公表など論外です。
 今、また、今日の情勢の下、少人数学級の取組を後退させることなど、本来あってはなりません。しかし、県制度の見直しで、小学2年生と中学3年生において、学級人数の上限が、それぞれ30人が32人、35人が38人へ、中学2年生において、35人から38人へと引き上げられました。直ちに元の学級編成に戻すことを強く求めます。
 深刻化するいじめが増えています。この背景には、学校での活動に加え、塾や習い事で子どもが忙しくなっていること、受験や学力テストなど、過度な競争教育や人間関係でのストレス、教育にかかる公的支出がОECDで最下位と日本の教育予算が極めて少ないこと、それに起因する教員不足と教員の多忙化、新自由主義的な経済政策のもとで格差と貧困が拡大し、社会に希望や展望を見出しにくくなっていることがあります。
 今、教育行政に求められていることは、少人数学級をさらに進めること、就学援助制度の拡充やさらなる教育費無償化など、子どもと保護者への支援を充実すること、全ての教室、体育館へのエアコン設置、老朽化するトイレの改修など、子どもたちが安心して学べるよう教育環境を改善することです。さらに、多忙を極める教職員の勤務環境を改善することも急務です。
 また、本県教育が、不安定な勤務条件の下で働いている多くの臨時的任用教職員によって支えられている現状にも目を向けるべきです。こうした問題を是正するために、正規教職員の大幅増員、臨時的任用教職員の待遇改善を求めます。
 第9に、県民生活に欠かせない地域公共交通を守ることは、県行政の柱の一つです。今、運転手が確保できないことによるバス路線の廃止や減便が相次ぎ、タクシー運転手の不足とも相まって、県内各地の公共交通が危機に瀕しており、一層の支援強化が求めらます。
 また、萩・石見空港の東京線2便運航にかかわって、有償での搭乗者が年間12万7000人を下回った場合、リスク分担として、その不足数に応じた金額を航空会社と県や地元市町などで折半して負担することとなっています。利用促進のための県予算は1億8620万円に及び、不足数が発生した場合、これに加え、更なる負担が生じる可能性があります。財政民主主義の観点からは、議会の議決による債務負担行為の設定が必要ではないでしょうか。
 第10に、国がすすめる軍備の拡張に、県が加担すべきではありません。島根の空の安全を守るためにも、騒音などの住民被害をもたらしている米軍機の無法な低空飛行訓練の中止を強く求めるとともに、美保基地や出雲駐屯地について軍事基地としての機能強化を行わないことを求めるべきであります。また、米軍に治外法権的な特権を与えている日米地位協定の抜本的な見直しを強く要求することを求めます。
 第11に、県民の命と安全を守ることこそ県政の最大の使命ですが、それを脅かす存在が島根原発です。度重なる法令違反を繰り返す中国電力に県民の不信感は根強く、原発を動かす事業者としての適格性さえも問われています。使用済み核燃料、高レベル放射性廃棄物の処理方法は確立されておらず、核燃料サイクルは既に破綻しています。
 県民の笑顔と幸せを奪い去るのが原発事故です。原発がある限り、毎年、原子力防災訓練を続けなければならず、膨大な準備時間と予算、要員や物資を投入しなければなりません。こうした努力を重ねているにもかかわらず、実効ある避難計画とはなっていません。この現実を、真摯に受け止めるべきです。
 原発ゼロを決断し、使用済み核燃料や原子炉の処理が終われば、原子力防災訓練をする必要はなくなります。そればかりか、原発事故に備えた避難計画の策定も不必要になります。地震、豪雨など大規模災害も頻発しており、島根原発の廃止を決断すべきであります。
 最後に、島根県政の取るべき方向についてです。
 1つは、県民合意のない大型建設事業を中止し、県民の暮らしと命を守るための財源を確保すること。2つに、原発稼働に向けたあらゆる動きを中止することです。この両立こそ、県民の命と安全を守る基盤であり、島根創生の大道(だいどう)です。
 松江北道路建設計画はきっぱり中止し、原発ゼロの島根をつくる、そして安全・安心の再生可能エネルギーの普及を強力に進め、新たな雇用と産業を創出すべきです。この進路こそ、中山間地域をはじめ県内各地を活性化させるものであり、島根創生成功に向けた確かな道であることを強調するものです。

【認定第1号議案「令和4年度島根県病院事業会計決算の認定について」】

 次に、認定第1号議案「令和4年度島根県病院事業会計決算の認定について」であります。
 県立中央病院では、看護師の2交代勤務が行われています。看護師の健康悪化、ひいては離職につながり、患者にとっては、安心・安全な看護の提供の面から有害です。
 県民誰もがひとしく安心して県立病院を受診できるように、紹介状のない受診時の加算料や差額ベッド料の徴収など、保険外負担の選定療養費徴収は廃止し、保険証一枚でかかれる公的医療保険制度の充実に努めるべきです。
 県立中央病院は、救急医療、地域医療、災害医療、周産期医療など、県医療計画に基づく政策的医療を推進し、県民にとってかけがえのない命綱の病院、宝の病院であります。インフルエンザやコロナなどの感染症がまん延する下、県民の命と健康を守るため、懸命の努力が続けられています。心からの感謝と敬意を表するものであり、医療従事者の処遇の改善、医療体制のさらなる強化を求めるものです。
 なお、今期の中央病院の控除対象外消費税、いわゆる損税は8億3925万円にも及んでおり、消費税が病院経営を圧迫する一因となっています。また、健全な病院経営の観点からも、診療報酬のゼロ税率適用並びに消費税減税が求められていることを強調するものです。

【認定第3号議案「令和4年度島根県水道事業会計決算の認定について」】

 最後に、認定第3号議案「令和4年度島根県水道事業会計決算の認定について」です。
 水道用水供給事業において、大田市、江津市に送水する江の川水道施設の施設利用率は、わずか43.5%です。その結果、大田市や江津市は、県下トップクラスの高い水道料金となっています。同様に、飯梨川水道施設の施設利用率は63.9%、斐伊川水道施設は67.4%と、低利用率であります。これら県営水道事業は、積算根拠、需要予測を見誤ったため、使わない水まで住民負担となっており、高い水道料金に市民から悲鳴が上がっています。
 地方公営企業法第3条の経営の基本原則には、常に企業の経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進するように運営されなければならないと規定されています。それはすなわち、安全な水を、住民の負担とならないよう、低廉な価格で供給することにあります。県として、高い水道料金を引き下げるため、受水団体への資本費負担軽減を図るなど、料金軽減策を講じるべきです。
 終わりに、日本共産党県議団は、今回の決算審査に当たって、全体会、分科会におきまして、300項目を超す資料の提供を求め、質疑を行いました。審査過程において、全ての執行部の皆様から誠意ある回答、並びに資料の提供をいただきました。心からの感謝を申し上げ、討論を終わります。

議事録及び録画中継は県議会のHPにてご覧になれます。尾村県議の動画